この9月は、フィンランドの森でマッシュルームとベリー摘みをする日々、ロンドンでの短いお仕事の日々の後、イギリス・ヘレフォードシャーの森で1週間wifi不通のオフグリッド生活(調理や暖は焚
火、トイレはコンポスト、灯はキャンドルとオイルランプ、寝床はベンダーという樹木の枝を丸くまげてタープをかぶせたオープンタイプのテント)で、手作業
で椅子を作っていました。。。
樹皮がついたままのアッシュの木の丸太を、ふたりがかりでひっぱいあいっこするスタイルのおおーきなのこぎりでカットする
ところから始まった、グリーンウッド(生木)の椅子づくり。想像以上にチャレンジが大きくて、途中で一度は「自分にはできそうにない」とあきらめたほど
だったのだけど、ほかの皆さんよりだいぶん時間がかかったり、いろんなマチガイもいっぱいしたけど、なんとか完成しました。
一緒に椅子づくりをした仲間のみなさんが、とっても気さくで心やさしい人たちばかりで、よく笑わせてもらえたのと、この工房の主宰者であるマイクさんとア
シスタントの方々が、おおらかに温かく(ときに辛抱づよく)プロセスに寄り添って、各自がつくりたい椅子をつくれるよう巧みに助けてくださったので、ほん
とにおかげさまでした。
次第にマチガイをおかすことさえもむしろ面白くなっていったのには、自分でもおどろきました。アクシデントや予想外の展開も、オープンに迎え入れてみちゃうと、また別のなにかが表れること。。。
カットした丸太は、同じアッシュの木々に囲まれた森の中のオープンエアの工房で、穴開け用の小さな電動ドリル以外は機械類を一切使わずオール手作業で、樹皮をはいで、割って、削って椅子のパーツの形にするのです。
割るのも、削るのも、木目に沿って行うので、割ってみるまで、削ってみるまで、そのパーツがどんな形になるかはわからない、というのがうれしかった。。。 その木がなりたい形になる、というところがうれしいのでした。ふしがあったりすると、ふわんと曲がるのです。
椅子の背になる部分など、左右均等な「曲げ」が必要なパーツは、焚火の火でわかしたお湯の湯気で1時間蒸しあげてから、やはり手作業で曲げをかけて、焚火の火で温めた空気で乾燥させました。
こうすると左右同じ角度に曲げをかけられます。
そして最後は、くぎもなにもなしにパーツ同士をむぎゅーと押し合わせて、組み立てました。木が乾燥するときの縦横の収縮率の違いを用いて頑丈に組む方式で、こうして組むと、もうぶらさがってもビクともしないほどの強度に。
フレームができたら、最後は紐を編み込んで座面をつくりました。編む日の朝、一部の紐をアシスタントのセオさんにこの森のエルダーベリーの実で紫に染めてもらうことができて、しましまの座面になりました :) ベリー大好きな自分にとって最高の色味!
編みのパターンも各自すきなものを選んだのだけど、難しいパターンを選ぶと間違えてなんどもほどいてやり直したりすることになってなかなかチャレンジ
で。。。。 わたしは比較的簡単なパターンを選んだけど、まちがえたし、作業が遅いので、難しいパターンの人たちと同じくらい時間かかりました。。。が、
なんとか最終日の夕方に無事完成しました!
その晩、ようやく心底ほっととして、森のふちにある、丘を見下ろす広い原っぱで今回の学びについて思いめぐらしつつぼーっと星空を見上げていたら、すーっと流れ星が1つ、流れました。お祝い、のように思えました。
できあがった椅子をミイラみたいにプチプチでぐるぐるまきにして、連れ帰ってくるのもなかなかおもしろかったです。。。
森からロンドンへ電車で出るあいだ と、ロンドンの街中から空港へ地下鉄で移動するあいだと、ヒースローから成田へそして家までの道中、ぐるぐるまきのままの椅子に腰かけて休んだりできて便利でした :)
* * *
いつか、と夢の次元で願ってたことがこんな早くほんとうになったことに、いまでも驚いているようなふうだけど。。。マイクさんをはじめいろいろにお世話に なった皆さま(日本で、イギリスで)と、椅子になってくれたアッシュの木とエルダーベリー、迎え入れてくれた森のさまざまな存在の皆さま(夜中に歯磨き粉 のふたをがんばってかじってたねずみくんにも)に、ありがとうをお伝えしたいです。
人と森をつなぐ、マイクさんのグリーンウッドワーク。椅子をつくる、ということだけでなくて、そのプロセスそのものと、それをとりまく衣食住のすべてが有機的なところが、ほんとうに大好きです。
そして、工房主宰者としての、マイクさんの姿勢も、大好きです。「自分やアシスタントは、みんなが自分の作りたいものを作るための情報提供者なんだよ、みんな、自分の好きなようにやってみていいんだよ、ただし自分でリスクを負ってね」とマイクさん。「あなたは椅子づくりを教えてくれる”先生”で、われわは”生徒”だと思ってましたよ!」とある参加者が言うと、「その”教育”概念は見なおしたほうがいいね!!」とマイクさんは大声で言って、笑っていました。。。
あんなふうに、ものづくりをガイドできる人、かっこいいな。チャレンジや自主性を励まして、なおかつ、「結局結果が出なかった」ということには決してさせないよう、それとなく目配りをしつづけて全力でサポートしていくのは、かなりすごいことなんじゃないか、と思った。。。特に自分が落ちこぼれぎみだったので。。。
いつか、あんなふうに人と森、人と自然、人とその人自身の尊厳をつなぐ場づくりが、わたしにもできたら、うれしいな。そのためにも、まず自分が、このつながりを生きることを、深めていきたいです。
連れ帰ってきたこの椅子も、それを助けてくれますように。。。
マイク・アボットさんのサイトはこちら(マイクさんによる森の工房での春〜夏の椅子づくりコースは2016年までの予定です)
http://www.living-wood.co.uk/