最近どうも、元気が出なくて、こまっています。少しなにかすると、ふうと疲れて。いろんなことを、うまく考えられない、ということもあって。何が起きているんだろう。湿気のせい? 忙しかったせい? 自分の元気のよりどころを見失っているかのようなふうでもあります。
でも昨日はようやっと、竹藪がさっぱりと刈られて日当たりがよくなった西側の窓辺に、ふうせんかずらでグリーンカーテンを仕立てることができました。ふうせんかずらの種は3つずつポットに撒いておいたら、1粒だけ不発でしたが、23粒は全部発芽して、立派な苗になりました。一部には、もう小さな白い花をつけている苗もいます。
グリーンカーテン用に、南側の窓辺に12本、西側に9本植えて、2本はあんどん仕立てにして楽しませてもらうことに。
さて、元気が足りないので、最近ちょっと元気が出たことを思い出してみる。。
グリーンウッドワーク指導者養成講座でお世話になっている森林文化アカデミーの久津輪さんが、先日本をお出しになって、それにともなって、黒田辰秋氏がスペインで1967年に撮影された生木の椅子づくりの映像をシェアしてくださいました。
見たら、目からうろこ!でした。道具がとにかくシンプルでぐっときます。メインの作業台は、削り馬ではなくて、細い台。その台の上には様々な場所に穴がうがってあって、その穴に差し込めて取り付けられるようになっている木のかたまりがあります。自分の胸に板をぶらさげて、その板と、この台にとりつけた木のかたまりとのあいだに、椅子の部材をはさんで削るのです(ドローナイフのように引いて削るのでなく、押し削り)。
そして椅子の脚は、小径木そのままを、樹皮をはいで荒削りしたもの(すなわち芯持ち材)。貫・座枠は同じくらいの径の枝を半割にして整形していました。
なによりびっくりだったのが、ホゾ。貫・座枠の整形をするとき、そのまま端のホゾまで一気に四角っぽく削って終わりらしいこと。別途ホゾをつけるという作業がない。。。四角ばったこの端っこを、そのまま丸い穴に打ち込むのでした。要所要所、木釘で留めることはしていたみたいです(もしくはボンドで)。
穴開けも豪快だった。。。ドリルの形状も魅力的で。そして穴開けもやっぱり、胸に穴開け用の板をぶらさげて(この板にはまん中に丸いくぼみがうがってあって)、ドリルの手前側をこの板の穴にはめて、ドリルの先端は、台に載せた材に当てて、上から体重をかけながら回していきます。すごくムダがない。。。
そして途中でわきを大勢のヤギが通ったり、終始くわえタバコで作業をする姿、かっこよすぎます。。。
プチ興奮状態に入って、見入ってしまいました。脚は芯持ち材だけど、生木の芯持ち材で割れは大丈夫だったのか?とか、樹種は何を使ってるのか?とか、どのくらいのなま具合なんだろうか?とか、いろいろ疑問がわいて、久津輪さんの本をさっそく入手しました(もともと出たら買う♫と決めてた本ですが、実は予算の関係で7月までがまんしようと思ってたのに、でも、どうしてもがまんできなくなりました)。
届いて、一気読みしました。とても視野が深くて広くて、ひきこまれた。歴史をひもとき、国をまたぎ、地域をまたぎ、さまざまな人たちの視点を含んでいて。とりわけ民藝運動について、そして木工家の黒田辰秋さんに、迫っています。。。そして久津輪さんが去年行かれた、スペイン取材の章が特にとても興味深かった!
こうした椅子が生まれた背景は、ロマの人たちの文化との関わりがあったらしいこと、洞窟暮らしとも関係がありそうなことなど。
今度、久津輪さんのお話会を聴きにいくのが楽しみです。で、ゴッホの椅子については今日はちょっと置いておいて、ここからは、この本のおかげで存在を知った、中国の曲木椅子のこと。
黒田辰秋さんが、「ゴッホの椅子」という愛称がついているこのスペイン・アンダルシアの椅子を、こうも深く愛していながら、宮内庁から依頼を受けた皇居で使う椅子をつくるにあたっては、中国の曲木椅子を原型にデザインしていったこと、興味深かったです。
黒田さんは、「ゴッホの椅子」と、中国の曲木椅子を、「民芸木工の椅子として両横綱と言える内容を持っている」と言っていたそう。そして「日本人による日本のための椅子」をつくることに、こだわっていたらしい。
わたしは中国の曲木椅子については、何も知らなかったので、久津輪さんの本の図版でみて、不思議なつくりだなあと思いました。パーツは無垢材なんだけど、前脚〜座枠の1本〜後脚が1本の木でできていて、2カ所で曲げをきかせてある。脚と座面がまずあって、背もたれは構造上、後付けな感じ。地にどかっと4つ脚をつけてある感じ、地面に近い感じがあるというか。気の流れとして、地面から前脚を通って上がってきて、ずうっと連続してそのまま後脚を降りて、また地面に帰る、という流れが際立つというか。
「ゴッホの椅子」や、わたしがマイクさんから教わったスピンドルチェアや、久津輪さん・加藤さんから教わったラダーバックチェアは、後脚がそのまま長く伸びて背もたれになっています。だから構造上は、この垂直性が際立ちます。地面から離れて、天へ向かう方向性というか。地面から脚をとおって上がってくる気の流れは、4本の脚すべてにおいて、上がりきってその上空に拡散する感じ。
中国の曲木椅子は、曲木という面倒な手順を加えてまで、どうしてこういう構造にしたんだろう?と疑問がわいて、少し調べると、丸竹でつくった椅子がたくさん出てきました。
なるほど、竹のしなやかさがあったから、こういう構造が考え出されたのかな!と思いました。丸竹をいちいち切ってホゾ穴にはめて組み上げるよりも、曲げた方が早かったのかも? そして曲げるのも、わざわざ部材全部を蒸し器にいれて蒸し上げて曲げるんでなくて、曲げる部分のみを、ちょっとあっためたりしていたのかもしれない。一部を切り欠いた竹なら、しなやかに曲がるはず。
黒田さんが惚れ込んだという古い曲木椅子は竹製ではなく、無垢材のパーツでできていたけれど、図版写真をよおくみると、前後の座枠が、脚の曲げの部分に挟みこまれているように見えます。そうだとすると、竹の曲木椅子の構造そのまま。
この「挟みこみ式ジョイント」が写真でもよくわかる、こんな興味深いブログも発見しました。中国で作り手から譲ってもらったという、竹ではない木でできた曲木スツールと、台湾の荒物屋で売られていた竹の曲木スツールをくらべていらっしゃいます。構造がうりふたつだということも、よくわかる!
ついでに、伝統的な竹の曲木椅子を、現代生活に合うようにアレンジしなおしている、木智工坊さんという中国のデザインスタジオも発見しました。
デザインスタジオのサイトには、人々が田舎暮らしをしていた昔は竹は家具作りに多用されていたこと、こういうタイプの竹製の椅子のデザインが完成されていたこと、竹は量産には向かないのと耐用年数が限られていることから、多くの人が都市に移り住むのと同時に竹椅子は田舎に置き去りにされて、暮らしから姿を消したことが書かれてありました。
別の個人サイトですが、竹の曲木スツールの職人の写真もありました。ここでつくってらっしゃる職人さんは、穴開けのドリルも竹製。弓錐式。貫を止める木釘を打つための、下穴を開けているところみたいです。
実に興味深いです。こういう発想があったんだなあ。で、この中国伝統の丸竹椅子、台湾からの輸入を試みた日本のお店もあったようなんですが、なかなかむずかしかったみたい。なんでも、使っていて年月がたつとギシギシ音がしてくるとか、湿気の多い台湾とは違って乾いた季節のある日本には向かいないとか。
でも作り方は知りたいなーと思ってたら、こんな動画を見つけました。アメリカの木工愛好家向けの番組の、過去放映分のDVDに、中国の竹の曲木椅子の作り方を取り上げたものがあったもよう!プレビューだけ見られるようになっていました。
この番組で紹介している竹椅子(つくろうとしているほうでないほうの)、かなり美しいつくりです。。。いやはや。魅力的です。
青竹のほうの椅子の作り方を見てみたくって、思わずこのDVDを買ってしまいたくなりますが。。。今月はもう予算オーバー。。。でも台湾や中国の工房を訪問するよりは手軽なので、いずれ入手してみてみたい気もします。
しかしわたしの好奇心、どこへ向かうんだ。。。そもそも自分は何がしたいんだろう。。。
P.S. 余談だけれど、中国の伝統的な丸竹の曲木椅子の、背もたれのスピンドルは下広がりなものが多そうで。イギリスで教わったスピンドルチェアは、典型的にはスピンドルの角度は上広がりにするのでした。この違いも興味深い。それでもって、わたしがスピンドルチェアをつくったとき、まさかの穴の開けマチガイをして、スピンドルが予定したのと上下さかさまについてしまったといハプニングがあったのだけど、結果として、中国式の下広がり型のスピンドルになったのでした! これはミスではなくて、アジアの人間としてまっとうなことをしたということなのかも?(^^)